奇怪な業界にモノ申す、精神科医田中宗親のブログ

stat rosa pristina nomine, nomina nuda tenemus
過ぎにし薔薇はただ名前のみ、虚しきその名が今に残れり
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精神科に行ってもなおらない!?2〜怖い薬の知識編
さて、前回睡眠薬と抗不安薬を飲み続けると

A基本的に
病気本体は治らない
B薬を止められない可能性がある(依存とは関係なく)
C長く飲むと脳にずっと残る障害がある

と申しました。

現在使用される睡眠薬と抗不安薬はほぼ全てが

”ベンゾジアゼピン系”
という系統に属します。

化学的な構造式にある共通項が有る、ということなのですが
この薬剤達はいくつかの悪癖があります

一つ、依存性が有る(物に因ってはほとんどない物もある)
二つ、次第に耐性が出来る(全部)
三つ、長期間飲むと認知機能が低下する、しかも戻らない
   さらには認知症になる確率が高くなる。
   認知症の方が飲むと認知機能が下がる上、せん妄状態(幻覚を見たり)になる
   つまり脳に悪い
   (上記Cに当たる)


という物です。

依存も耐性も問題ですが、本当に危険なのは三つ目でしょう。

・・・これ、飲みたいですか?

ただ勘違いしないようにしたいのは”短期間なら問題ない”のです。
”短期間ならば副作用をほとんど起こさない”
”相性問題もほとんど生じない”
これが我が国の多くの医師が安易に使う理由です。

私も処方することがあります。
寝る前にワイパックスだけ、ですが。
それでも出す時は徹底的に説明します。
こんなに喋る精神科医は日本に居ないのではないか、というぐらい。
エ○ィ=マーフィーくらいしゃべります。
それぐらい伝えなくてはならない事が有るからです。

問題は既に他医師にベンゾジアゼピン系の処方をされている患者様の診察をした場合、上記の悪癖どころか”ベンゾジアゼピン系”という名前すら知っている患者様はほとんどおりませんでした。

つまりこれだけ重要な事を全く患者様に説明しない精神科医が多いという現実。

説明するのも面倒なのでしょう。
患者様の10年先なんてどうでもいい。
とりあえず適当に診察して納得させて帰せば良い。
楽して高給をもらえれば良い。


・・・そう考えてる方が多いような気がしてなりません。


今回は最後に”ベンゾジアゼピンがアルツハイマー型認知症のリスクを上昇させる”という最新の論文をBMJよりお届けします。さすがに長いのでabstractだけでご容赦ください。これを読むのは同業者様方でしょう。
ベンゾジアゼピンに関しての脳への悪影響の論文は枚挙に暇はありませんが。



次回は
ベンゾジアゼピンによって
なぜ病気本体が治らないか
なぜ止められなくなりうるか

です。


 

Benzodiazepine use and risk of Alzheimer’s disease: case-control study

BMJ 2014349 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.g5205 (Published 09 September 2014)Cite this as: BMJ 2014;349:g5205
 
  1. Sophie Billioti de Gage, PhD student1
  2. Yola Moride, professor23
  3. Thierry Ducruet, researcher2
  4. Tobias Kurth, director of research45
  5. Hélène Verdoux, professor16
  6. Marie Tournier, associate professor16
  7. Antoine Pariente, associate professor1
  8. Bernard Bégaud, professor1

Abstract

Objectives To investigate the relation between the risk of Alzheimer’s disease and exposure to benzodiazepines started at least five years before, considering both the dose-response relation and prodromes (anxiety, depression, insomnia) possibly linked with treatment.

Design Case-control study.

Setting The Quebec health insurance program database (RAMQ).

Participants 1796 people with a first diagnosis of Alzheimer’s disease and followed up for at least six years before were matched with 7184 controls on sex, age group, and duration of follow-up. Both groups were randomly sampled from older people (age >66) living in the community in 2000-09.

Main outcome measure The association between Alzheimer’s disease and benzodiazepine use started at least five years before diagnosis was assessed by using multivariable conditional logistic regression. Ever exposure to benzodiazepines was first considered and then categorised according to the cumulative dose expressed as prescribed daily doses (1-90, 91-180, >180) and the drug elimination half life.

Results Benzodiazepine ever use was associated with an increased risk of Alzheimer’s disease (adjusted odds ratio 1.51, 95% confidence interval 1.36 to 1.69; further adjustment on anxiety, depression, and insomnia did not markedly alter this result: 1.43, 1.28 to 1.60). No association was found for a cumulative dose <91 prescribed daily doses. The strength of association increased with exposure density (1.32 (1.01 to 1.74) for 91-180 prescribed daily doses and 1.84 (1.62 to 2.08) for >180 prescribed daily doses) and with the drug half life (1.43 (1.27 to 1.61) for short acting drugs and 1.70 (1.46 to 1.98) for long acting ones).

Conclusion Benzodiazepine use is associated with an increased risk of Alzheimer’s disease. The stronger association observed for long term exposures reinforces the suspicion of a possible direct association, even if benzodiazepine use might also be an early marker of a condition associated with an increased risk of dementia. Unwarranted long term use of these drugs should be considered as a public health concern.


by doctor mental-ドクターメンタル 田中宗親




 
『あのね、何が起きてるとかこの薬は何かとか、そんな事はどうでもいいの! とにかくやる事(治療)は一緒なんだから!!』

――すごいでしょう、これ、メンタルクリニックじゃありませんが、東十条の某理会にある感染症にかかって行った時の医者の台詞そのままです。
その医者は
「あなた、死にますよ」
「ねえ、死にますよ」
「このままじゃ死ぬんですよ!」

「今ここで家に帰してもし今夜死んだら、私のせいになるんですよ!!」

……それが本心かよ、という医者でした。いつだったか先生にはお話しした、PRC?でしたっけ、ソレ絡みの時の話です。
とにかく入院しろと出口を塞ぎ、厭々ながらも自分も今のメンタルの状況を説明しました。答えは

「だから何ですか、死ぬよりマシでしょう! メンタルの辛さは解りますけどね、とにかく今はすぐ、ここで、即入院してください!!」

あははー普段「俺もう死にたい」が口癖の人間には今夜このまま苦しまずに死ねるなんて福音以外の何物でもねー。
結局医者を押しのけ外に出て、無理矢理2時間の点滴を受け、そして掛かり付け医が出してくれた処方を全て変えた別薬に変わり

その夜、見事に40度の熱がぶり返しました。
掛かり付け医の薬に戻して一瞬で下がりました。

二度と行きませんでしたね、そこには。内科には良い先生も居るんですけどねえ……
結局その感染症は、掛かり付け医の元で筋肉注射を毎日行う、という手段で何だか治りました。普通に。
その先生は薬の説明もちゃんとしてくれました。母がソレ系の薬にも詳しく、一番有名な薬を避けてますね?との質問にも「いえ、これにはこうで――」という『狙い』のちゃんとした説明が。
筋肉注射の内容にしても、まあ素人ですから限界はありますが、キチンと中身を説明し、これが駄目ならこういうのを打ってみる、との説明が。

やっぱり、信頼できる先生っていうのは薬の説明はキチンとしてくれるものですよ。
そして持論なのですが、薬の説明が極めて不十分で会った場合。

人にもよるとは思いますが。

オーバードラッグに簡単に走ると思います。大雑把に「これは頭痛の薬です」それだけの説明で出された薬を飲んだ、頭痛が治まらない、痛い、痛い、痛い、――そうなったら、やっぱり飲み足しちゃいます。
本当は、それは命に関わる危険な事かも知れないのに。成分表やネットのお薬辞書などでは判らない、痛い、とにかく痛いのは痛いんだから飲むしかない――

ええ、まあ、自分の事なんですけどね。

だって痛いし、ただ大雑把に出された薬じゃ第一種も第二種も知った事じゃないですって……『今痛いのをどうにかしたい』どうにかしないと眠れもしない、なら……
そういう阿呆を防ぐ意味でも、適切なポイントの薬剤の説明って大切だと思います。その説明から、ならこういう時は?と繋がり、そういう時はこうして、また、この薬は1で出すけどあまりに酷い時には1.5までは自分の判断で増やしても――と、そういった『やりとり』が治療だと思っています。

一方的に、ただ「症状は? じゃあはい、これとことれこれ」で終わりでいいなら、自販機で充分ですよ。症状ボタン押したら薬だけ吐き出して下さいと。

とまあちょっと話が逸れてしまって何なのですが、例え自分が望む薬と違う薬が提案されて、一時言い合いになったとしてもそれが治療。
本当に患者を思う先生というのは、言い合いと言ったって上記のような乱雑な人ではないですからね。必ず穏やかな着地点に行き着きます。

そして説得力があります。ここ、というピンポイントを押さえてるんですよね。

前回も言ったように、自分はリフレックスにはかなりの抵抗がありました。それを復活させるだけの説得力。
薬ってのは目的を持って作られたモノですし、先生はよく『武装』という言い方をしますが、そう、武装ならばそれをそこで用いる『理由と説得力』というのがあると思うのです。
説得力ってちょっと2つの意味があって、ちゃんと患者を説得できるようになる、という意味での「説得力」は経験が必要でしょうが、本質の意味での『説得』と『説明』を投げる先生は信用できません。


それでも――メンタルなんです。こう言っては何ですが、基本もう「諦めてる」人がどうしても多い科なんですよ。
だから「どうでもいい」。とりあえず「効果がある」とされる薬(ある程度は今はネットで調べられますしね)を出してくれて、それが直の副作用として眠気だ吐き気だ即出なければ、とりあえずそれでいい。
そういう気持ちで、今まで病院には行っていました。まして院長→理事長先生ならばそうそう大間違いもなかろうと安易な考えで。

――先生のブログ
千石一輝 | 2015/01/26 00:14
って切れちゃってる。長文で切れますの目立った警告表示ないんですね、場合によっちゃ投稿できないケースもあったりしますが。

とりあえずでも話の区切りも良いですし、最後の一行は無視してください。――先生のブログはまだ続きますし、今回はここで切ります、ってそのままの内容でしたので。

いや何というか、毎回長くて申し訳ありません。
どこでも長文派は嫌われるものだと判っちゃいるんですけどね(苦笑)
千石一輝 | 2015/01/26 00:20
ブログ拝見させて頂いてます。
お薬の説明してくれるお医者さんってホント少ない。
田中先生の引き継ぎの先生は、正直言ってお医者さんというか人として幻滅してしまいました。
診察室入っても挨拶もしてくれず、PCモニターだけ見て私と目も合わせず、
それでいて初見で「見た感じ元気そうだから薬必要ないね」と言われました。見た感じ…??怒
「薬カットするから、それで眠れなくなったら睡眠薬出すよ」と。さすがにこの処方は納得いかず、散々質問攻めをして噛みついてやりましたが、めんどくさがられました。

特に精神科は、症状が数値で表されるものではないので、先生によって病名も違ければ薬も違う。自分で、「元気になりたい!」って思って生活習慣を正して、早寝早起き、栄養のある食事、ウォーキング、自分でできることに最善を尽くしても、正直「医者次第」って部分がありますね。こっちは素人なので、いくら薬の知識を入れて症状を訴え、どういう処方をしてほしいか話しても、
お医者さんが「必要ない」と言ったらそれまで…

医学用語や薬学のこと、難しくて全部は理解しきれないけど、田中先生のようにしつこいくらい丁寧に話してくれるお医者さんに巡り会うのは奇跡レベルですね。


Megumi.C | 2015/01/27 15:34
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